Cカードの品質・均質性が保たれていない前提に立つと見えてくる、現状の問題やリスクを見ていきましょう。

Cカードの品質低下のリスクは
ガイドとユーザーが引き受ける現状

Cカード認定の「プロの監督無しで、バディとダイビングができる」という前提が崩れた場合のリスクは、認定したダイビングショップやインストラクターの手から離れた後、ダイバー(客)とガイドが引き受けることになります。

ダイバー(消費者)側は、もしエントリーレベルに達していなくても、認定された以上、エントリーレベルダイバーとみなされるリスクがあります。

生活商品と異なり、水中という未知の世界で遊ぶダイビングでは、ダイバーのリテラシーが効きづらく、品質を見極めることが困難です。
Cカードホルダーではあるものの、自分が達成要件を満たしていないダイバーだと気づかないことすらあるわけです。

そして、足りないスキル(リスク)はガイドが引き受けることになります。

「プロの監督無しで、バディとダイビングができる」前提であれば、ダイバーは自己責任で潜り、ガイドはその海の環境や計画など全体的な注意義務を果たしたうえで、あとは案内やサービスに集中できるでしょう。
しかし、前提となるスキルがない、さらには「ガイドについていけばよい(安全管理をしてくれる)」とすら思っているダイバーが客である場合、大きなリスクとなりえます。

Cカードの品質管理と
ガイドのガイドラインの必要性

Cカード講習が健全に行われていないケースがあるという前提に立ったとき、まず必要なことは、「品質管理」ができるような仕組みを作ることです。
また、同時に、ファインダイビングにおけるガイドの職責を規定するガイドラインを必要でしょう。

Cカードの品質管理については、すでに存在する講習のルール・プログラムをしっかり守るための仕組みですが、ガイドのガイドラインについては“存在しない”ので、より急務でしょう。

なぜ、これまでそのようなガイドラインが存在しなかったかといえば、Cカードホルダーのダイバーが「プロの監督無しで、バディとダイビングできる」という前提があったからです。

しかし、その前提が崩れれば、ダイバー側も基本的な安全管理は自分でするものだと考える人と、依存することが前提の人とに分かれます。

また、ガイド側も、「ダイバーは自己責任で潜り、ガイドは、あくまで水中を案内するだけ」という人もいれば。
逆に、「ガイドはゲストの命を守るために安全管理をすることが当たり前」と考える人もいます。

つまり、ガイドの役割が曖昧である上に、ダイバー(客)とガイドの役割分担のコンセンサスが曖昧な状況でファンダイビングが行われていることが最大の問題といえるでしょう。

そして、その問題は、すでに、ダイビング事故裁判の判例によって顕在化しています。

ダイビング事故の態様と紛争の実状

多くのダイビング訴訟を事業者側の弁護人として担当してきた上野園美弁護士は、ダイビング事故の過失について、以下のような見解を述べています。

■事故者が初心者の場合(体験ダイビング、Cカード講習中)
→過失を争えないことが多い。

■事故者がCカード保有者の場合(主にファンダイビング中)
→事故者の過失も問題になる。
→ガイドの注意(管理)義務、客の責任も問われる

ファンダイビング中の事故では、常に争点になるのが、「ガイドの管理(注意義務)」の範囲となります。

つまり、少なくとも、「ダイバーは自己責任で潜るもので、ガイドはただ案内するだけで、安全管理はしない」は通用しません。

では、どこまでの範囲が妥当かということが争点になるわけですが、基本的に、トレーニングの裏づけによるガイド資格はありません。
つまり、ガイドというファンダイビングの直近の安全管理者であるガイドに、統一された安全管理基準がなく、非常に不安定な存在となっています。

ダイバーとガイドの立場を考える上で参考になる判例記事をひとつ紹介します。

★ファンダイビングにおけるガイドの監視義務の範囲は?
https://oceana.ne.jp/accident/50532

詳細は、リンク先の記事を見ていただくとして、この刑事裁判の争点を抜粋すると、

  1. ゲスト(事故者)がエントリーに失敗したことなどから事故の予見可能性があったか
  2. ガイドは事故者とバディを組み、事故者を自己から1メートル以内の所において、5秒から10秒に1回観察するという義務があったか(ガイドの注意義務)
  3. これらの注意義務を果たしていれば事故を回避することができたか

という3点が挙げられたようですが、特に注目したいのは、ガイドの注意義務に関する裁判所の判断です。

まず、バディの組み方について、検察官は「ゲストのダイビング経験やダイビング能力などから、ガイドが最も動静に注意を払うべき相手は事故者であり、ガイドは事故者とバディを組むべきであった」という主張をしています。

これに対して裁判所は「バディの組み合わせ自体よりも、ゲストの動静にどのように注意を払うべきであるかということが重要であって、ガイドの注意義務として特定のゲスト(一番ダイビングスキルなどのないゲスト)とバディを組むことが必要とは言えない」と判断しました。

また、検察官からは「事故者のダイビングスキルは体験ダイバーにとどまるものであったのだから、事故者はCカードを有していないダイバー同様に扱うべきであった」という趣旨の主張もなされましたが、裁判所は「Cカードを保有するファンダイバーは基本的には自ら危険を回避することができるスキルを備えているものと見なさなければ、資格制度の意味はなくなるから、体験ダイバーとCカードを保有するファンダイバーとを同列に論じることはできない」としています。

そして、裁判所は「ガイドに、海中で客と3~4メートルの距離を保ち、排気の泡の状態や泳ぎ方、マスク越しにうかがえる表情を確認する以上の注意義務があったということはできない」という判断を示したのです。

担当弁護士の上野先生の言葉を借りれば、「この裁判所の判断は、ファンダイビングにおけるガイドの監視義務の程度を示したもので、実務的にも非常に参考になるのではないかと思います」。

この判断は、裏を返せば、「ガイドに、海中で客と3~4メートルの距離を保ち、排気の泡の状態や泳ぎ方、マスク越しにうかがえる表情を確認する程度の注意義務は必要」とも言っているので、やはり、この辺は現場のガイドの意見を集約し、ダイビング業界側としてガイドラインを示すことが急務でしょう。

一方、ゲストであるダイバー側としては、「Cカードを保有するファンダイバーは基本には危険を回避するスキルを備えているものとみなされる」ので、きちんとした講習がなされていなければ、リスクとなりえます。

「苦手なマスククリアを免除してもらった」と喜ぶのではなく、手を抜かれたと怒るべきではないでしょうか。

プロ資格と職種が不一致
わかりにくい

サービス提供者のプロ資格として、いわゆる指導団体といわれるダイビングトレーニング機関のインストラクター資格、ダイブマスター資格などがあり、倫理規定や詳細なカリキュラムもありますが、基本的に限定された枠組みと条件の中での運用となります。

具体的には、ダイビング講習がその目的であり守備範囲であり、現地オペレーションをカバーするものではありません。
ダイビング業界のコアであり、ユーザーに海の魅力を伝える重要な役割を担うガイドについては、基本的にトレーニングの裏づけによるガイド資格がありません。

このように、プロ資格が、多様化するダイビングの職種と必ずしも連動してないので、まずは、Cカード講習を教えるインスタクターと、ファンダイビングのサービスを提供するガイドを、明確に分けて、それぞれの問題を検討することが重要です。

Cカードの品質・均質性が保たれていない前提に立つと見えてくる、現状の問題やリスクを見ていきましょう。