提言者

寺山英樹氏/オーシャナ編集長

 

Profile てらやま・ひでき氏

法政大学アクアダイビングクラブ時代にダイビングインストラクター資格を取得し、卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。

ダイビング入門誌副編集長を経て、現在は海とダイビングの総合サイト「ocean+α(オーシャナ)」編集長。

著書に『スキルアップ寺子屋neo.』(水中造形センター発行)など。

 

テーマ選出の理由

ダイビングの安全を考えるとき、その根本となるダイバー認定(Cカード講習)の果たす役割は大きい。

しかし、質の低下や均質性が保たれていない現状に対して、どのような解決法があるのか考えることはとても重要です。

そこで、メディアというレジャーダイビング産業を俯瞰して見られる立場の視点から解決策を示してもらうことは有益です。

 

提言内容

ダイビングの仕事は割りに合わない!?

「ダイビングの仕事をしたいです!」と目を輝かせて相談に来る20代の若者に、自信を持ってオススメできない自分がいます。

その理由をひと言でいえば、ダイビング産業が「割りに合わない」仕事となりつつあるから。

もう少し具体的にいえば、法的リスクが高く、既存のビジネスモデルによるマーケットは飽和状態だからです。

 

そのような状況を生んだ根本の問題は、ダイビング業界としてのガバナンスがないことに尽きるでしょう。

そして、その副産物が、“ 本音と建前で運用されているダイバー認定(Cカード講習)”と、自己責任と管理責任の綱引きの中で、“ 曖昧な役割のまま、高まるガイドという職業のリスク” です。

 

本稿では、Cカード講習の矛盾から派生する課題を明らかにし、解決の可能性を探りたいと思います。

さらに、マーケットの可能性にまで言及できたらと考えます。

 

均質性が保たれていない!? 本音と建前のCカード講習

まず、ダイビングの入口となる、ダイバー認定(Cカード講習)に“本音と建前”“矛盾”があり、矛盾を抱えたまま建前を前提とするわけですから、何もかもが狂います。

 

認定証を発行するのは、いわゆる“ 指導団体”で、複数の指導団体が集まり組織されたCカード協議会(レジャーダイビング認定カード普及協議会)のホームページには、認定証の意義がこう書かれています。

「基準には、最低限どんな事ができなくてはならないか、どんな事を知識として知っていなければならないかが決められています。この基準によって最低限のエントリーレベル講習の内容と、Cカードの均質性が保たれています。また、基準があることによって、ダイバーを受け入れる側は、ダイバー達がこれまでどのような講習を受け、どんな事ができるようになっているのかを知ることが可能となり、どのようなダイビングの受け入れ方をすれば良いのかを判断することができます。基準は、言い方を変えれば『どのような能力を持った人達をダイバーと呼ぶのか』を定めているとも言えます」

 

しかし、この意義が、“ 建前”に聞こえてしまうのが現実でしょう。

Cカードホルダーに均質性が保たれていないこと、あるいは、取得すべきはずの技量に達せずとも認定されるケースがあることは明らかです。

 

私が運営する、海とダイビングの総合サイト「オーシャナ」で講習についての実態をアンケートしました。

大手の指導団体「PADI」が公開する、Cカード講習で習得すべきスキルと照らし合わせて、自分が講習を受けたときにきちんと行われたかどうかをダイバーに聞いてみたのです(図1)。

本アンケートは、回答者の正確な属性が不明で、統計としては参考データ程度のものですが、少なとも「マスターすべきスキルをマスターしないで、教わるべきことを教わってすらいないで認定されている状況はある」とはいえるでしょう。

旅先で取ったままフェードアウトした人たちを合わせたら、教わるべきを教わっていない人の割合はさらに上がるのではないかと推測します。

 

このような講習が行われる背景は後述しますが、簡単にいえば、マーケットの飽和による価格競争と達成主義という名の裁量主義、つまり講習に抜け道があるからでしょう。

さらに、ショップに長く通ってもらうために、むしろ依存型ダイバーをビジネスモデルの中心に据えているケースもあります。

 

また、なかなか何度も行けない南の島で、旅のついでにCカードを取得する場合や、パッケージツアーでCカード付きをうたってしまえば、なかなか認定しないという選択肢が難しくなります。

 

問題はスキルの未熟ではなく依存が当たり前のマインド

誤解をしてほしくないのは、ショップを中心にダイビングを行うことは効率も良く、何より、人生を豊かにするコミュニティになり得ます。

情報をクローズし、選択肢を奪ってしまうことが問題だと考えます。

また、南の島の短期間・低価格の講習についても、事情を考えると、体験ダイビングで十分楽しめるのではないかと思います。

 

つまり、本音と建前をやめましょうと言っているだけです。

山に例えるなら、同じ山頂に行くのに、ゴンドラを使って行く、ガイドについて歩いて登る、自ら計画して登る、などいろいろな選択肢があっていいわけですが、ゴンドラの選択肢しか見せない、ゴンドラで行く装備で登山をしてしまう状況を作ってはいけないというだけのことです。

 

そうしたCカードの本音と建前のしわ寄せを受けるのは、依存していたショップからフェードアウトしたり、南の島で不十分なスキル認定を受けたりした、本音と建前の狭間に落ちたダイバーです。

もし、Cカード講習で教わるべきことを教わらなかったら、「マスククリアを免除してもらっちゃった」と喜んでいる場合でなく、むしろ怒るべきです(下記「Cカード講習でマスターすべきスキル」参照)。

 

Cカード保持者に本来要求されているスキル

器材のセットアップ、装着と調節こむらがえりの除去-自分とバディ 水面でBCD への給気/排気視標を使った潜降
レギュレーター・クリア 〜息を吐く方法とパージ・ボタンを使う方法
ホバリング-30秒間 レギュレーター・リカバリー
〜アームスイープ法とリーチ法 水平に泳ぐ〜トリムの調整
少し水の入ったマスクのクリアバックアップ空気源の使用 バックアップ空気源の使用バックアップ空気源を使って泳ぐ/浮上する
潜降と圧平衡コントロールされた緊急スイミング・アセント ハンド・シグナルバディとウエイト量とトリムの調整
水中を泳ぐ疲労ダイバー曳行〜25メートル/ヤード ゲージの使い方と残圧のチェックスクーバ・キットの脱着-水面
浮上潜降-着底しない 水面でBCD に給気(オーラル) 傷つきやすい水底の上を泳ぐ
プレダイブ・セーフティ・チェック(BWRAF) オーラル・インフレーションでホバリング〜1分間 ディープ・ウォーター・エントリーフリーフロー・レギュレーターからの呼吸
適切なウエイト量とウエイトのチェックマスクなしで泳ぐ スノーケル/レギュレーター交換水底に着かないで浮上
水面を泳ぐ-正しい水面習慣スクーバ・キットの脱着〜水中 ファイブ・ポイント潜降ウエイトの脱着〜水中
中性浮力-パワー・インフレーターエキジット 全部に水の入ったマスクのクリアスキン・ダイビング・スキル
マスクの脱着とクリアインフレーター・ホースの取り外し マスクなし呼吸緩んだシリンダー・バンドの締め直し
エアが少なくなってきたときの対応ウエイトの脱着〜水面 エア・マネージメント-20bar/300psi の誤差の範囲エマージェンシー・ウエイト・ドロップ

株式会社パディ・アジア・パシフィック・ジャパンHP(http://www.padi.co.jp/)より抜粋

 

また、もっと手軽にダイビングを楽しみたいなら、体験ダイビングでも十分ですし、逆に、サポートを前提とするなら、その分の対価を払えばいいだけです。

もちろん、誰もが最初はビギナー。

未熟である段階があるわけですが、問題は、最初から誰かに依存して潜ることが当たり前だというマインドです。

こうしたダイバーも最初の時点できちんと説明しておけばいいだけですが、依存型ダイバーを生み出すことをビジネスモデルにしているショップでは難しいでしょう。

対照的に、ケアンズでCカード講習を取材したとき、イントラが講習生に、ことあるごとに「この講習が終わったら、君たちバディだけで潜るんだからね」と言っていたことが印象的です。

 

建前のしわ寄せの先にあるガイドのハイリスク

Cカードが「自分のことは自分でできるダイバーの証」という前提が崩れてしまったしわ寄せは、受け入れる側のガイドにもやってきます。

 

ちゃんと潜れる“はず” のダイバーが、ガイドに依存するマインドであれば、ガイドは海の案内人ではいられません。

しかも、リゾートでは、初めて会うダイバーをガイドすることが日常なので、なおさらです。

「ガイドはゲストの命を預かっている(守っている)」。

真面目で誠実なガイドさんほど、こういう思いが強いのですが、その思いが逆に、一番大事な自分の人生と、愛する家族を守れないことにつながることにもなりかねません。

 

なぜなら、ダイビング事故が起きたとき、裁判になれば現場における因果関係が重要で、たとえば、どんなに未熟なCカードホルダーだとしても、認定したインストラクターより、案内したガイドの責任が問われるからです。

「ゲストの命を預かる」とは、その海の環境が持つリスクや不意に起こるトラブルへの対応という意味で使われるならいいのですが、現状では、ダイバーのスキル不足、さらにいえば、インストラクターの不十分な講習のリスクもすべて引き受けるということにもなり、文字通り、命を預かる状況になりかねません。

 

ゲストに対する健全な“ 矜持” であったはずが、“管理責任”となって、ダイビング事故が起きたときに重い責任を問われる可能性があるのです。

 

実際、ダイビング事故の判例を見ても、注意義務があることは前提で、「1m 以内にゲストを置く」「5秒から10秒に1回観察する義務」なんてことが争点になった裁判もあり、驚くばかりです。

この裁判では、さすがにそれは退けられ、「ガイドに、海中で客と3 ~ 4m の距離を保ち、排気の泡の状態や泳ぎ方、マスク越しにうかがえる表情を確認する以上の注意義務があったということはできない」という判断を示していますが、これは裏を返せば、それぐらいの注意義務はある、とも受け止めることができるのではないでしょうか。

 

建前の先にあるダイバーとインストラクターのリスク

一方、ダイバーやインストラクターにもCカード講習の矛盾による法的リスクはあります。

 

ダイバーとしては、Cカード講習が不十分だったうえに、ガイドには「あくまで私は案内人ですから自己責任で潜ってね」と言われたら、「ちゃんと教えられてもいないのに、都合のいいように自己責任を持ち出されても……」となるのは当然です。

 

実際、先述の裁判では、Cカードホルダーのダイバーが未熟であったことが問題視されましたが、裁判所はこう言っています。

 

検察官からは「事故者のダイビングスキルは体験ダイバーにとどまるものであったのだから、事故者はCカードを有していないダイバー同様に扱うべきであった」という趣旨の主張もなされましたが、裁判所は「Cカードを保有するファンダイバーは基本的には自ら危険を回避することができるスキルを備えているものと見なさなければ、資格制度の意味はなくなるから、体験ダイバーとCカードを保有するファンダイバーとを同列に論じることはできない」としています。

 

つまり、Cカードを保有するダイバーは、たとえ、不十分な講習をされた場合でも、実際の技量とは関係なく、「自ら危険を回避できるスキルを備えているもの」とみなされる可能性があるということです。

 

講習を行うインストラクターも、講習中の事故はもちろん責任を問われます。

ダイビング訴訟を多く扱う上野園美弁護士によれば、初級のCカード講習では、過失を争えないことが多いとのことです。

ただ、不十分な認定のままダイバーを放り出し、のちに事故になっても、そこの部分が責任を問われることはあまりないようです。

 

ダイビングの責任論について話すとき、どの立場で考えるかによって見え方、提言の内容は変わるわけですが、割と俯瞰して見ることができる立場にいる自分としては、指導団体がバックにいるインストラクター(Cカード講習をする人)や消費者庁や世論がバックにあるダイバー(消費者)に対して、ガイドはノーガードで曖昧な存在であると感じます。

 

ダイビング業界は幻!? 矛盾の解決と道筋

結局は、ちゃんとCカード講習をやりましょうよという話ですが、真面目にやるほど損をするという矛盾も起きてくるので、容易ではありません。

いわば、ダイビング産業の全体的な構造機能不全なので、犯人捜しをしても意味がありません。

よく特定の指導団体がやり玉にあげられますが、ある意味、指導団体はルール、役割を明文化し、企業として一番きちんとリスクヘッジをしているように見えます。

 

俯瞰して見たとき、むしろ、指導団体と議論・交渉できるイントラやガイドの組織がなく、メディアが機能していないことのほうが問題だと考えます。

 

では、どうしたら解決できるのか。

最初に結論づけた根本問題に立ち返ります。

「ダイビング産業にガバナンスがない」。

 

これを解決するには、大規模資本の外圧か業界への参入がてっとり早いのですが、マーケット規模が小さくて大資本からの参入はなかなかありません。

また、行政とのパイプ役として唯一の公益社団法人である「日本レジャーダイビング協会」の果たす役割は大きいのですが、現状としては、有名無実どころか認知すら十分でないのが現状でしょう。

今後、存在感を示していただきたいと期待します。

 

では、自分たちにできることは何なのか? を考える前に、「私をスキーに連れてって」や「彼女が水着にきがえたら」の脚本家で、自らもダイバーである一色伸幸さんとお話したときの刺さったひと言を紹介します。

「スキーはブームだったけど、ダイビングはバブルだった」。

 

つまり、スキーは浮き沈みはあるものの業界というガバナンスがある一方、ダイビングにはそもそも業界などというものはないということです。

そうであれば、はじけた後の幻影にガバナンスを求めるのは間違いなのかもしれません。

 

さらに、変化、多様化するダイビングスタイル、細分化する価値観の中では、自分の立場から、理念や地域、職業を共有する仲間を増やし、ガバナンスのきいた小規模な集まりで、矛盾や建前を解決していくしかないでしょう。

 

「Cカード講習の矛盾や建前を改善しよう」「矛盾から発生したリスクから身を守ろう」「マーケットを奪い合うのではく、一緒に広げよう」というのは、共通の認識ですが、さまざまなアプローチが実際に行われています。

いくつかの例をご紹介します。

 

Cカード講習の矛盾を解決するためのアプローチ例

Cカード講習内容の充実・改定と品質管理

2013年に20年ぶりに改訂されたPADIのオープンウォーターコース。

 

簡単にいえば、「バディ潜水ができるように、ちゃんと教えましょう」ということで、講習にバディ同士による計画潜水が加わりました。

この大きな動きが、バディダイビングを見直す今の動きに先鞭をつけたともいえる、意義のあることでした。

 

問題は、きちんとその通りに実行されているのかどうかがあやしいのと、それが公平に実行される仕組みがあやしいことです。

仕組み・ルールを整えずに達成主義を掲げることは、抜け道、裁量という名の手抜きの温床にもなり得ます。

現場が真面目にやればやるほど経営が圧迫される、競争に負ける、ということも考えられます。

 

PADIとしても、調査やランダムアンケートなどによる「クオリティコントロール」を行っていますが、もう少し直接的なフェアな品質管理の仕組みがない限り、うがった見方をすれば、アリバイ作りという見え方もできなくはありません(企業として当然のリスクヘッジでしょうが)。

 

各指導団体が集まって組織されているCカード協議会による品質管理についても、表明している理想に現実が合っておらず、つまり、ここにも本音と建前が見え隠れしてしまいます。

 

ガイド付きが前提の初級コース 新しい指導団体の設立

ダイビングの最大の旅行社エス・ティー・ワールド(STW)が、オーシャンアカデミーという新しい指導団体を設立しました。

指導団体の乱立は良くないことだと思っていたのですが、理念を聞いてみて、おもしろい考え方だなと思いました。

 

オーシャンアカデミーのいわゆるエントリーレベルのCカード講習の認定は、「プロと一緒に潜ることができる」がゴール。

つまり、本音と建前がないのです。

 

日程が決まっている、南の島でのCカード講習パックツアーは、Cカードが取得できなければクレームにもなるので、何となく認定せざるを得ない雰囲気が生まれます。

自然相手のフィールドで個人差も大きい中での認定となると、自己管理できるダイバーを認定するのは難しく、そうであれば、プロと一緒に潜ることを前提とした認定にするというアプローチは、良いか悪いかは別として、嘘が介在していません。

 

問題は、ネットワーク以外で汎用性がないことですが、ダイビング界大手の旅行社のネットワークであれば、良い意味でのこうした囲い込みマーケティングはおもしろいとは思います。

 

安全管理者でなく案内人 ガイドの役割を表明

ガイドの高まるリスクに対して、2016年7月、公益社団法人日本レジャーダイビング協会とレジャーダイビング認定協議会が、「水中ガイドの役割」を明確に表明しました。

ごく簡単にいえば、「ダイビングは自己責任が基本で、ガイドはあくまでリスクの告知と海を案内するのが仕事だからね」ってことです(下記「水中ガイドの役割」を参照)。

 

水中ガイドの役割

ダイバーの皆様にガイド付きダイビングをより安全に楽しんでいただくために、私たち水中ガイドが果たす役割を明確にお伝えするものです。

「水中ガイドの役割」はレジャーダイビング認定カード普及協議会(Cカード協議会)の監修と協力支援のもとに承認されて周知と広報を行います。

公益社団法人日本レジャーダイビング協会

①水中ガイドとは、特定のダイビングポイントに関する楽しみ、危険性をダイバーの皆様にお知らせし、そのダイビングポイントの水中をご案内する業務をいいます。私たち水中ガイドは、水中ツアーにご参加いただく皆様が、ダイバーとしての知識とスキルを習得し維持できていることを前提にしていますので、皆様の知識、スキルなどを補うことをその役割としておりません。

②ドリフト、ナイト、ディープ等の別に設定された知識、スキルが必要となるダイビングにおいては、皆様の安全を確保するために、そうした分野の知識とスキルを習得されたダイバーの方のみを水中ガイドいたします。この様な特別なダイビングをご希望される場合は、コース等で事前に必要となる知識とスキルを習得されたうえで、ご参加くださいますようお願いいたします。

③私たち水中ガイドは、ダイバーの皆様をご案内しようとする水域の特徴的な情報をご提供します。具体的な情報には以下の内容が含まれています。

>一般的なコンディションとダイビング実施日のコンディションをご説明します。
○コンディションの例>>明度/深度の幅/潮流の有無・向き・速さ/水温/避けるべき水域とその理由
>ポイント特有の危険性と、ダイビング実施日の特別な危険性を紹介し、その回避方法をご説明します。
○危険性の例>>天候や海況の変化予測/危険な構成物(吸・排水口他)/危険な生物/水面の危険性(船舶の往来他)/潮流の強さと変化
>ガイドするダイビングポイントのコンディションに適したテクニックをアドバイスいたします。
○テクニックの例>>エントリーとエキジットの方法/特有の意思疎通テクニック/水中移動の方法/緊急時の対応テクニック/浮上の手順
>当日のダイビングに必要となる器材がある場合は、その器材をご紹介します。
○特別な器材の例>>シリンダーのサイズ、空気、ミックスガスの選別/シグナルフロート/水中ライト/保湿・保護スーツ及びフード・グローブ・ブーツ/マーカーブイ/バックアップ空気源/フィンのブレードの強度/その他

山と海、スペシャリスト対談 山から学ぶ安全対策
日本レジャーダイビング協会HP「水中ガイドの役割(http://www.diving.or.jp/news/safety/post_6.html)」より引用。一部脱字修正。

 

業界としてガイドラインができたことは評価できます。

ただ、実際のダイビング事故の判例で、すでに、少なくともガイドの職責には“ 監視義務”があることに議論の余地はなく、前提になっていますので、より具体的なガイドのガイドラインが必要になるでしょう。

 

もっといえば、業界のガバナンスがないのであれば、ローカルや各立場でのガイドラインを作ることが必要になってきます。

 

実際、とある山岳事故をきっかけに、旅行業界では、レジャー、アウトドアツアーの運行ガイドラインの作成、見直しが図られ、山については、登山業界と組んで「ツアー登山の運行ガイドライン」を作成しました。

しかし、ダイビングやガイド業には、それらを統合する組織やガイドラインがなく、困ったとある大手旅行会社に依頼され、業者選定の安全ガイドラインを作成するお手伝いをさせていただきました(※下記安全基準ガイドラインの例を参照)。

 

MEMO 業界選定の安全基準チェックリストの例 ※一部抜粋

ダイビングオペレーターのスタッフの資格、レンタル器材、ボートの運用、安全態勢など100項目近い具体的な基準は、旅行業界からの安全要求条件ともいえます。そして、同時にこの基準はダイビングのサービス内容の具体化です。

本来は、旅行業界が要求するのではなく、レジャーダイビング業界自らが、統一された最低安全基準やサービス基準を持っていることが正しいビジネスでしょう。ぜひ、参考にしていただけたらと思います。

 

日本一のダイビングサイトである沖縄でも、一般財団法人 沖縄マリンレジャーセイフティービューロー(OMSB)と各地域のダイビング協会や協議会と連携して、ガイドラインの作成やガイドの地位向上のための活動を活発化させています。

沖縄はショップ乱立からガバナンスがもっとも効かないエリアとなっていますが、できることからやっていくしかないでしょう。

 

ちなみに、山のガイドは、ガイドとしての協会が存在し、ガイドラインはもちろん、資格もあり、学ぶことも多いはずです。

 

日本への導入はあり得るか!? パーミット制や法規定

世界には、ダイビングに関する法律による規定やパーミット(認可)制度などもあり、日本でもそのような動きもありました。

すでにカオス化している沖縄などでは合理的に見えますが、大手資本に集約されることにもなり得ますので(実際、法律規定のあるオーストラリアのクイーンズランド州では、大手資本10社程度に集約)、なかなか困難でしょう。

 

新マーケットとして注目されるインバウンドの新たな問題

新しいマーケットとして真っ先に思い浮かぶのがインバウンド。

実際、沖縄では県の予算のもとプロジェクトが進められ、先見の明があるショップは、レッドオーシャン化する既存のビジネスモデルを横目に、先行メリットを生かしてブルーオーシャンを航海しているように見えます。

一方で、外国人の受け入れに関する、法的な問題やダイビングスタイルの違いなどの新たな問題が生まれています。

 

新しいマーケットを掘り起こしつつ矛盾を解決する「BuddyDive」

国内でも新しいマーケットを作り、本音と建前に一石を投じる動きがあります。

といっても、ここからは自分が関わっていることになるのでフェアな論評にはなり得ませんが、建前や矛盾をなくし、新たなマーケットを作ろうという問題意識のもとやっていることなので、ご紹介します。

 

2016年、バディダイビング(セルフダイビング)の予約サイト「BuddyDive」をオープンさせました。

 

これまで、バディダイビングをする条件として、「レスキュー以上」「ダイブマスター以上」「100本以上」「チェックダイブ次第」など、いろいろな基準がありましたが、ダイバーにとってはわかりにくい話です。

 

なぜ、こんなローカルルールを作らざるを得ないことになるかといえば、Cカードが「バディダイビングができるスキルの証明」とならなくなってしまったためです。

 

そこで、このサイトは、単なる予約サイトではなく、「Cカードで得るべきスキルを習得していること」「保険に入っていること」など、自分たちのことは自分たちでできるという証明をしていただいたダイバーに、タンクのレンタルなど、主にハード面でのサービスを提供するという仕組みです。

受け入れ側は、ダイビング施設として、統一した安全レギュレーションを持つセンターのみを選定しています(AED、酸素、緊急時の対応シミュレーション、スタッフなど)。

つまり、スキー場では、リフトが落下したり、ゲレンデの整備に不備があったりしたらスキー場の責任ですが、スキーヤーのスキル不足でケガをしたり、新雪を求めてコース外で遭難したらスキーヤーの責任というのと同じです。

 

こうした動きには、マーケットを奪われるという意見が出てくるのですが違います。

選択肢を増やすことはマーケットを拡大することであり、たとえば、バディダイビングをやってみれば、むしろ、ショップやガイドの価値が見えてくるでしょう。

 

主体的に潜ることは、脱依存型ダイビングへの第一歩でもあり、ダイバーに新しい価値を提供できるダイビングスタイルには、ダイビング産業のマーケットを広げる可能性もあります。

さらに、「Cカード講習で教わるべきスキルをマスター」が参加条件なので、建前が浮き彫りになることでしょう。

「変化、多様化するダイビングスタイル、細分化する価値観の中では、自分の立場から、理念や地域、職業を共有する仲間を増やし、ガバナンスの効いた小規模な集まりで、矛盾や建前を解決していくしかないでしょう」と先述しましたが、このサービスはまさにこの考えから生まれたものです。

 

ダイビング業界全体でまとまることは難しくても、共通理念を持つ者同士ならまとまれます。

それでもオープンまでに数年かかりましたが、今では伊豆半島、紀伊半島、三浦半島の25のダイビングサイトが登録され(2017年4月現在)、バディダイビングを楽しむことができるようになりました。

 

可能性を感じるインディペンデント・ダイビング

形骸化するバディシステムを問題視する声はよく聞きますが、「そもそもバディシステムはレジャーダイビングに向いていない」という論もあります。

 

バディシステムを成立させるためには、バディがチームとして共通の目的を持ち、つねにシステムが機能する状態を保ってダイビングを行うことが必須ですが、昨今のダイビングは“ 海を楽しむ”、たとえば、フィッシュウオッチングや写真撮影がメイン。

“ 人を助ける”ことが目的の海猿や、洞窟を制覇するといった目的を持つテックダイバーとは異なり、フィッシュウッチング自体にはバディのサポートや協力が不可欠というものでもなく、むしろ、バディシステムは気を散らす要因といえます。

ましてや、互いが写真撮影に没頭していれば、バディの存在はむしろリスクとさえなってしまうのです。

 

そんなことを考えると、最も合理的な潜り方は、対バディではなく、対ガイド、対インストラクターのシステムが実は理想的ですが、先述したように、そうなると、ガイドへの依存度が高すぎるという問題が出てきます。

依存するという選択はありですが、それであればもっとガイドに対価を払うべきでしょう。

 

そして、今のようなパーソナルなテーマや楽しみを追求するレジャーダイビングにマッチしているのが“ソロダイビング”という可能性に行きつきます。

 

ソロダイビングというと、イコール単独潜水と誤解されがちですが、ソロダイビングはあくまでプログラムで、より適切な言葉を使えば、“インディペンデント・ダイビング”(非依存型ダイビング、あるいは自己完結ダイビング)。

何かトラブルが起きても自分で解決できるダイビングのことで、このダイバーなら、水中でじっくり撮影しても、対ガイドという潜り方でも問題ありません。

 

ガイドも完全なるJUSTガイドに専念できるので、形骸化したバディダイビングより多くの人数で潜ることもできるでしょうし、法的なリスクヘッジにもなります。

 

もちろん、世論形成やポニーボトル(予備の小さいタンク)の導入など、受け入れの問題もありますが、バディダイビングのような受け入れのネットワークができ、プログラムを開催できるSDI(指導団体)のブランチが日本にできた現状では、少なくとも絵に描いた餅ではなくなりました。

 

インストラクター認定にも建前のある現状

既存のビジネスモデル、特に、ガイド業をメインとした現地ダイビングサービス、Cカード講習や物販をメインとしたダイビングショップの事業形態に関しては、明らかにレッドオーシャン(マーケットが飽和し、競争が激しい状況)化しています。

 

消費者側も未知の世界であるダイビングではリテラシーがきかず、ここまで参入障壁が低いと、待っているのは、広告合戦、価格競争、SEO 対策の修羅の世界です。

そして、本来、ダイビング産業の核となるプロフェッショナルを育てることは重要なはずですが、そのインストラクター資格でさえ単なる商品化しつつあります。

 

インストラクター資格の矛盾を解決する動き

インストラクター資格が安易に発行されることは問題です。

しかし、先述したように、ダイビング産業としてのガバナンスがなく、構造不全であれば、「ちゃんとしろ」と叫んでもあまり意味がありません。

 

そこで、「インストラクター資格にも建前がある」を前提として施策もいろいろ出てきていますが、ありがちな方針は「どうレベルの低いイントラをふるいにかけるか」「どうフリーのイントラをふるいにかけるか」。

 

しかし、イントラ資格を出しておいて、他に本業を持っているようなフリーインストラクターを締め出すというのも、明らかな矛盾です。

 

こうしたフリーインストラクターは、ただ資格を取って終わりになりがちですが、そんなインストラクターが活動する場を設けようという動きがあります。

そもそもCカードホルダーがバディダイビングができる環境があってしかるべきであるなら、そもそもインストラクター資格を持つダイバーなら、インストラクションができる環境があってしかるべきでしょう。

たとえば、友人に「ダイビング教えてよ」と言われた時に、インストラクター資格を持っているにもかかわらず教える環境がないほうが異常です。

 

そこで、人やモノをシェアするシェアリングエコノミーで解決する動きです。

コワーキングスペースならぬ、コワーキングショップとでもいう存在です。

眠っているインストラクターが講習できる環境が整えば、新しいダイバーが誕生する可能性も広がります。

そういうとまた、「ショップのパイが食われる」と言う人が出てきますが、バディダイビングが広がるとむしろガイドの価値が上がるように、プロショップの価値も相対化され、正しいショップはむしろ価値が上がるでしょう。

 

他にも、C to C のビジネスモデルを示す人も出てきましたし、ダイビングありきでなく、あくまで“その価値の先にダイビングがあった”という考え方でビジネスを始めている方もいます(たとえば、社員研修としてのダイビングメソッドの価値とか)。

 

最後に

現地ダイビングサービスのオーナーが、若手ガイドに「ガイドはダイバーの命を預かっているんだ」と言っているのを聞くと、“ 無自覚に”ものすごいリスクを押し付けているというのが実態ですし、都市型ダイビングショップのオーナーが、若手イントラに、十分な時間を与えずに「規準通りにちゃんと講習をやるんだ」と言っているのを聞くと、“ 気づかないふりをして”矛盾を押し付けているようにしか聞こえません。

 

しわ寄せは弱い立場に行くもの。

目をキラキラさせた若者を既存のダイビング産業にオススメすることに躊躇する一方、一流のガイドが、そして、海の仕事に憧れを持つ若者が、安心して働けるような職場になることを願わずにはいられません。

 

また、ダイビング業界という幻影から離れ、自分の理念に忠実に動いてみると、案外仲間はいるもので、実はいろいろな可能性が広がっていることにも気づかされます。